「空間そのものが調味料になる」 歴史ある建築と響き合う料理を目指して。
ホテル川久
洋食調理 / 主任 S.Oさん
和歌山県出身。調理師専門学校卒業後、新卒でホテル川久に入社し、今年で7年目。ライブキッチンでの実演調理も経験し、現在は厨房内でのストーブ料理(煮込み料理)や仕込み全般をメインに担当する。ホテルを象徴する「王様のビュッフェ」を裏方として支えながら、建物の格式に見合う料理のクオリティを追求している。
ーーー入社までの経緯と、現在の主な業務内容について教えてください。
地元である和歌山の調理師専門学校を卒業し、そのまま新卒で入社しました。今年で7年目になります。以前はお客様の目の前でステーキを焼いたり、オムレツを作ったりするパフォーマンスも担当していましたが、現在は主にバックヤードでの調理が中心です。
具体的には、ストーブ料理と呼ばれる、大きな鍋を使った煮込み料理の担当や、食材の切り出しなどの仕込みを行っています。表に出る機会は減りましたが、多い時には一度に150名規模のコース料理の対応を行うなど、厨房の要として、心地よい緊張感と充実感のある毎日を過ごしています。
ーーー豪華絢爛な建築が有名なホテル川久ですが、働くスタッフや職場の雰囲気を教えて下さい。
外観や内装はまさにお城のように豪華で、一見すると敷居が高く感じるかもしれません。しかし、働いているスタッフの雰囲気は驚くほど穏やかです。すれ違うと皆ニコニコと挨拶を交わしてくれるような、和歌山らしい温かさや人の良さがあります。高級ホテルとしての緊張感は保ちつつも、人間関係は変な垣根もなく、伸びやかな環境です。この豪華な空間と、スタッフが醸し出す温かい空気感のギャップもまた、この場所の魅力だと感じています。

ーーー調理スタッフとして感じる、ホテル川久の料理の「ここが他とは違う」という点は何ですか?
やはり「食材の質」と「空間に負けない盛り付け」へのこだわりです。例えば、和歌山のブランド牛である「熊野牛」を使用するなど、原価をしっかりとかけた高級食材を扱えるのは、このホテルならではの魅力です。また、お客様はまるで美術館やお城のような空間で食事をされます。そのため、料理もその雰囲気に負けないよう、彩りを豊かにし、飾り付けを工夫して、見た目の美しさを常に意識して仕上げています。
ーーー訪れるお客様の層や、お客様がホテル川久に求めているものはどのようなものだと感じていますか?
年齢層はやや高めで、落ち着いたお客様が多い印象です。特に私の親世代の方々は、かつての「会員権2000万円」というバブル時代の会員制ホテルのイメージを持たれている方も多く、「特別な場所」として訪れてくださいます。そのため、お客様ご自身も少しお洒落をして、この非日常的な空間に浸ることを楽しまれています。私たちもその期待に応えられるよう、空間にふさわしい料理を提供しなければならないという責任を感じています。

ーーー料理人としての今後の目標や、挑戦してみたいことはありますか?
「素材の下ごしらえから仕上げまで、すべての工程において自らの技術で勝負できる料理を増やすこと」です。以前、同グループで熱海で運営するオーベルジュ「無為自然 -ATAMI-」へ手伝いに行った際、そこではすべての料理を一から手作りで仕込み、コース料理として提供していました。そのクオリティの高さと、料理に対する妥協のない姿勢に衝撃を受け、和歌山に戻ってきてからは「もっとレベルを上げなければ」と痛感しました。
現在はビュッフェ形式が中心ですが、その中でも手間暇を惜しまず、コース料理に引けを取らない「手仕事の深み」を感じていただける料理を提供できるよう、さらに技術を磨いていきたいと考えています。
